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ぽっかりと開いた、その円い暗闇。
何気ないが、その実さびれ果ててはいる公園に現れたそれは、開いたマンホールのようなビジュアルながらも、何か得体の知れない胡散臭さをも潜ませている。
話の流れからすると、この中に、この下に進むんだよねー、と当然そうなるだろうね的な選択肢が脳裏をわっせわっせと駆け巡るけれども、躊躇してしまうのはしょうがないことだよねー。
「……」
おまけに覗き込んで確認したところ、遥かなる闇の底へと誘うものは、階段でもハシゴでもなく、そっけない一本の金属の棒だった。
滑り棒、ないし登り棒……ノスタルジックな感覚を呼び覚まされてしまうばかりだけれど。
消防隊員も緊急出場の時はこういったのを使用するのを何かで見たことはあるが、これは逆じゃないか? 「本部」に帰るのに急ぐことってある?
「30メートルほど一気に下降する。命綱のような無粋なものは取り付けられてはいないから、まあ気を付けてくれ。30秒で閉まるから急ぐのだ」
無粋でも何でも、取り付けておいて欲しいものだけど。しかし「言っても無駄」な空気は既に浴びるほど取り込んでいるので、僕は黙ってそれに従うことにする。
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