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ガラスで区切られた向こう側にはプールで泳ぐ人たちの流れも見えたりで、凄い。本当……だったのか。まだ目の前に展開される光景が信じられずに、それらマシンの間を夢遊病者のようにふらふらとさまよう僕。
その時だった。
「ちょっと、邪魔」
呆気に取られていた僕の背後から、尖った声が掛かる。あ、すいませんと小声で謝りつつ、脇に退いて道を開けると、
「あれ見学? ……じゃないか。え? もしかして……」
怪訝そうな顔が、僕の目の前に突き出された。怪訝そうに細められていても、まだ大きなその瞳。すっと通った鼻筋。気の強そうな口許。結構明るめの茶色の髪は肩にかかるくらい。
しなやかな流線形を描く肢体は、メッシュが入ったぴったりとしたブラトップの黒いウェアに、下は七分くらいの同色のレギンスで覆われている。
え? 白昼夢? と思うくらい、僕の妄想がいつも描くような美少女と間近で対峙していたわけで。
驚愕が度を越した時に現れる真顔へと表情筋が移行しながら、僕は万が一にも現実だった時の事を考え、その見目麗しい姿を網膜へと焼き付けるために、大脳の演算能力をすべてそれに回し始める。
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