▲1九仲人(ちゅうにん)

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「……ぬうううう、フンッハっ! フンッハっ!!」  なるほどこういう物なのか、トレーニングマシンとはッ。広背筋、大円筋にピンポイントで来るじゃあないかッ、最高だッ、最高の気分だぁぁぁぁっ!! 「待て待てっ!!」  脳内にアドレナリンを200mlくらい撃ち込まれているようなハイな気分でバーを上げ下げしていた僕に、ミロカさんから鋭い制止が入る。 「……間違えた、80か」  僕の体の左脇を通って、ウェイトを調整している……っ。美しい背中のアーチラインは艶めく肌の質感と相まって僕の衝動を揺さぶるわけで、体が固定されていなかったら、両腕が上げられてなかったら、あぶないところだった。  改めて、上げ下げを開始する。先ほどよりは少し負荷を感じたものの、より背中の筋肉へ利いているような気がして嬉しい。 「ハンッフっ、ハンッフっ、ハンッフっ!!」  フハハハハ、乗ってきたぞおぉぉぉぉっ。心地よい、心地よい刺激だあぁぁぁぁっ。 「あ、待って」  ん? またも制止された。横目で見たミロカさんの表情は抜け落ちているけど、再びよき残香をとどまらせながらウェイトを調整してくれた。 「フォォォォォォォォォォォっ!! ンヌゥゥゥゥゥゥゥゥっ!!」  流石にキツくなってきた。だがそのキツさがまた! 心地よいッ!! 心地よいぞぉぉぉぉぉぉぉっ!! 「ぷふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」  最後はプルプルしてたが、何とか10回はこなせた。どうですミロカさん? そこそこやるでしょう、僕も。 「……」  懲りずにさわやかな笑みを送る僕だったが、そんな僕に向けられていたのは、完全に表情が死んだ美麗な人形のような能面だったわけで。  何か間違えていた? やり方。
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