△2一醉象(すいぞう)

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 と、その時だった。 「あっは! 何やおもろいコぉがおる思たら、同し学校とはなぁ。全然知らんかったわ」  人垣を割って、揉み手気味の拍手をしながら現れたのは、これまた二度見を奪われるほどの流麗な女のコだったわけで。  プールから上がったばかりなのか、ぐっしょりと濡れた赤茶色の髪からは水が滴っている。正に水も滴る……というやつだ。肩には大きめのスポーツタオルがかけられているが、その下の黒い競泳水着に包まれた肉感的な肢体が、動くたびにちらちら垣間見えて脈動に悪い。 「博士ぇ、このコがさっき言うてた、『獅子』のコなんやな? ええやん、規格外で。ふさわしいんちゃうか」  その水着流麗美少女は、僕の顔を悪戯っぽい目で見ながらそう言う。野性味あふれるけど、どこか妖艶な……そんな強い目力を受け、僕の脈動は留まりそうもない。  ああー、フウカくん、そうだよ凄い逸材だろぉ、と嘉敷博士がすっかり気を取り戻してその流麗美少女に追従笑い混じりでそう応えているが。フウカさんというのか。  僕はその結構な鋭角にも、どんと張り出した双丘にも、目を向けないように鋼の意志で眼輪筋を操作すると、ぐっと上腕二頭筋を強調するポーズをキメつつ、精一杯のさわやかな笑みをフウカさんに向ける。  目が合うと、にこりとしてくれたその笑顔に、僕はまたしても自分の中で何かがパチンパチンと外れるような感じを覚えるわけで。  父さん母さん僕を生み育ててくれてありがとう。僕は今日、ふと迷い込んだこの地下の異世界にて、途轍もなく大きな何かを得ようとしています。かしこ。
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