▲2二太子(たいし)

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「……稲賀(イナガ)フウカ。よろしくぅ」  髪についた雫を軽く払ってから、その水着流麗美少女、フウカさんは妖艶な笑みを浮かべたまま、手を差し出してくる。  え? 握手? いやぁ~若い女子に触れるのはこれ何年ぶりの事かいね~、と気持ち悪い笑顔にならないように気を付けながら、その華奢な掌を握り返そうとする僕。 「!!」  しかし次の瞬間、僕の右手首は掴まれて、反時計回りにぎりりと回されていた。き、極められている……にやにやとした笑いに変わっていたフウカさんは、そのまま僕の右腕を背中に回すと、あっさり僕の背後を取ったわけで。 「格闘はまだまだってとこやなぁ。がんばらんとなぁ。仮にも『獅子』を名乗る以上、飛ぶ道具なんかに頼んのはちょっとって感じやし」  ぐいぐいと僕の右腕に負荷を掛けてくるフウカさん。上腕二頭筋/三頭筋の内部に鋭い痛みが駆け上がってくるものの、首筋にはローズヒップのような甘い香りの吐息が吹きかけられ、背中には何か熱を帯びた二つの柔らかい感触も知覚されているわけで、まずいッ、衆目に僕の脈動が伝わってしまうッ! 「……でも、筋肉は一流。無駄なく、しなやかやん。見せるための筋肉と違て、ちゃんと骨に寄り添って、滑らかに付いてる。ミロカとか、こんなん見せられたら、たまらんのとちゃう?」  フウカさんの声が悪戯っぽい響きを帯びた。な、何ィッ? と右腕を極められたままの姿勢から首だけを起こして、正面で立ち尽くしている美麗な少女の方を向く。 「……!!」  と、先ほどの無表情から一変、「ギプス」という名のバネの束から垣間見える僕の右大胸筋辺りに、まじまじとやけに熱い視線を送っていた、その大きく艶やかな瞳と目が合ってしまう。 まさか右腕を後ろ手に極められていることによって図らずも強調されていた、僕の右乳頭付近をロックオンしていたとでも!?
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