▲2二太子(たいし)

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 学習能力がホモサピエンスの一コ手前と言われている僕は、懲りずに白い歯を剥き出してそれに応える。ミロカさんはしかし、また御褒美の氷の視線を投げつけてくれるかと思いきや、さっと顔を赤らめ、僕を指さし、こうのたまうのであった。 「ば、バッカじゃないのっ!! こんなのエセなんだからっ!! ジュン様に比べたら、このうすら『と金』なんて、なんて……なにその『バネ』!? 頭おかしいの!? あちこち肉挟みまくりじゃあないのよっ!!」  父さん、今日僕は、地下異世界で希少種(ツンデレ)に遭遇しました……そしてそのツンは他ならぬ僕に向けられているわけで……父さん、父さんが得ようとして得られなかったモノを僕は、この僕がッ、手に入れようとしているわけで…… 「!!」  思考が遥か高みまで飛びかけた、その時だった。 <新宿御苑南東『下の池』付近に、『イド』出現の兆しあり。目標は92%の確度で『ホリゴマンダー』と見られます……お手すきのレンジャー隊は現場に急行してください>  耳に障る警告音の後に、やや緊迫感の無い女性のアナウンスが流れる。まさか……敵かっ!? 僕に掛けられていた関節技が、すっと解かれるのを感じる。 「ミロカくん、フウカくんっ」  険しい顔つきに変わった嘉敷博士がそう呼ぶ前に、二人の少女たちは行動を開始していた。 「……最近多ない? 何かいぃやな予感するわぁ」 「どの道、潰すのみ。『と金』っ、あんたも来るのよ」  ざっ、と揃いのジャンパーのような上着を羽織ると、フウカさんもミロカさんも引き締まった表情になって準備に動き出す。でも、僕も行くっていうのは? 見学? 「……ちょうどいい実戦演習だ、鵜飼(ウガイ)くん。敵はそれほど大した奴じゃあない。『レッド獅子』の初陣……見事飾ってみせてくれたまへ!!」  高らかにそう言うけど、右も左も分かってないのに? 僕はしばしの真顔で何とか状況を飲み下そうとあれこれ努力するけど、無謀じゃない、それ?
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