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「!!」
次の瞬間、僕の右掌は、ミロカさんの美しく整った顔をはたいて、振り抜いていた。わーおー、みたいな声をその横のフウカさんが上げるものの、もうこの美麗少女たちに好かれること、それは諦めた。それよりも、
「『八枚落ち』だろうが何だろうが、そんなこと関係ないぞ……関係ないっ。 それよ……それよりもっ!! いたいけな子供たちを盾にするような真似をしようとする者をっ!!」
時間が無い。僕は自らの上着の襟ぐりを引っ張って頭頂部に引っかけながら池の方向へと走り始める。
「……僕は断じて『ヒーロー』とは呼ばないっっっっ!!」
何あれ、と僕に気付いて指差してくる幼稚園児たちの姿が迫ってくるや、僕は白目を剥いて気味の悪いしゃくれ顔にシフトしながら、走り方もガニ股で前に垂らした腕を左右に小刻みに振るといった、得体のしれない化物に変容していく。
「……チョ~ォキョっキョっキョキョっ、ワレはヒトの悪手ヨリ生マレシっ、『指した瞬間ケツが座布団から5センチは浮くゲルゲ』ナルゾォォォォォォォォォォっ」
そのまま園児の群れに突っ込むと、指していた将棋盤をひっくり返したり、逃げ遅れた子の脇をくすぐったりして狼藉の限りを尽くす。
ぎゃあああダメ妖怪だぁぁぁっと意外に楽しそうに逃げ出す子供もいれば、本気でおびえてマジ走りで加速する子供、何あれキモ、と冷めた目で距離を取る女子もいるが、この場から、この子たちを遠ざけることが出来るのなら。
「!!」
芝生の上を逃げ惑う園児たちと引率の先生ふたり。……片方の描写は省くが、もう一方の先生は怯えて振り返った顔がまたしても僕の脈動を揺さぶったわけで。
「チョ~ォッキョッキョッキョ、キョ? KYOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!」
どさくさ紛れで女体に触れられないかな、と襲う振りをして本当に襲い掛かってみる。そんな既に身も心もゲルゲ化していた僕に、いきなり浴びせかけられる強烈な衝撃。意図せぬ叫びが僕の喉奥からいい天気の上空に向け、放たれていった。
ああー、そうか、いまやスタンガンって結構配備されてるって聞くよね……不審者から子供たちを守るためには最早必須だもんね……でも僕は金属のギプスを体に巻き付けるように常に装着しているから、人一倍電流が全身を貫くんだよね……はがねにでんきはらめぇぇぇぇぇっ!
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