▲2四横行(おうぎょう)

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「……」  薄れゆく意識を何とか引き戻そうと、両まぶたを必死でひくつかせてみるも、それが随意なのか不随意なのかはもう分からなかった。膝にも来た衝撃に、芝生の上にどうと倒れ込んでしまう僕。  でも倒れている場合じゃない。遠目からは騒ぎをいち早く察知した警察官らしき人たちが、園児・先生たちと入れ代わるように、一直線にこちらに向かって来ているのが見て取れた。まずい、ヒーローが獄中にいたら二次元人倒せない。 「……!!」  先ほど「イド出現」と告げられた場所まで、芝生の上をずり這いで何とか戻ろうとする僕。その低い視線の先にはフウカさんミロカさんの姿があるけれど、二人とも呆気に取られた風の顔でこちらを見ている。そんな僕を取り囲む影。 「そこのキミっ、動かないで!! 腕を頭の後ろで組むんだッ」  威嚇する言葉が僕の頭上で発せられる。  ままならない首を捻って確認すると、老若男女、四人の警察官に四方を囲まれてしまっていた。めいめいその手に警棒が構えられているけど、これもでんきタイプだよね……撃ち込まれたら今度こそ気ぃ失うわ。  だが。……現役の方たちなら。 ……かえって心強いと言えなくもない。 「ミロカさんっ……『イド』は……あと何秒?」  震える声を振り絞って、そう訊く。はっと我に返ったようなミロカさんは、左手首に目をやった。 「……あと2秒」 「……『ダイショウギチェンジ』っ!!」  懐から五角形の金属駒を既に抜いていた僕は、抵抗しないで後ろ手に組みますよと見せかけて、その駒を後頭部に乗せるように掲げると、力の限り叫ぶのであった。
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