△3二盲虎(もうこ)

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 今日のところはもうお開きでいいんではないでしょうか、みたいな二次会終わりのぐどぐど感を全身に纏わりつかせたような僕の提言に、ああそうですね、おつかれさまでした、と、労いの微笑みを見せてくれるナヤさん。幼さの中に秘められた真っすぐさ……それが僕の琴線に、ぽろりろと触れる。  あの素っ頓狂さを無くせば、このコ……いちばんありなんじゃね? とそもそも選択権を持たない僕が、そんな詮無い妄想をしかけ始めた瞬間、医務室らしきところのドアが荒々しく開く。 「……」  案の定、いや案の定って欲しくなかったけど、やっぱりそこにいたのは相当顔に怒りを滲ませたミロカさんだったわけで。いや、内面の怒りや恥ずかしさを渾身の平常心で抑え込もうとしているけど、やっぱりそれが沸き立つように醸されていながら、どこか愉悦と哀しみのようなものも内包するといったような、何とも喜怒哀楽や、その他どの感情にも当てはまらなさそうな、そんな人智を超えた表情をした美麗な少女が、いた。 「……ミロカ」  そのただならぬ妖気を即座に感じ取り、ナヤさんがその元に歩み寄って心配そうにその肩に手を掛けようとするけど。 「ナヤ……ドイテ……ソイツ……コ〇セナイ……」  地の底から響き渡るかのようにして発せられたその重低音に、ひぎぃ怖いぃぃ、ヒトの顔をしていないよ怖いよぉっ、といきなり叫ぶと、あっさりと部屋から走り去っていってしまった。え、ちょっと待って。
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