△3四猛豹(もうひょう)

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 思っていた以上に、体の方にもダメージは行っていたようだ。  諸々後の翌朝、ベッドからまともに起き上がれないほどの全身の筋肉のこわばりと痛みに、おっ、おひょおうっ、みたいな野太い咆哮が思わず口を突いて出てしまった。  もともとは二間続きの大部屋を、板戸で仕切っているだけが我が兄弟の部屋であり、お互いの物音もよく通る。5時くらいに起きて昨日の主だった対局の自己検討をしているだろう弟に、兄貴朝から何すっきりしてるんだよ、と思われたかも知れない。  まあいい。上半身にほどよい負荷を掛けてくれるギプスを軋ませ、特製学生服を身につける。いつも通り入念に柔軟を行うが、やはり体のほうぼうが重く硬い。調子に乗って初体験のマシンで無茶したせいなのか、その後の「対局」で、ほぼ活躍しなかったものの重いスーツを纏ってそれなりに動いたせいなのか、それともさらにその後の「説教」による精神への執拗なメンタリックアタックによる余波なのかは判別できない。多分それらの複合によるものとは思うが。  そんなコンディションだったこともあり、今日は走らずに学校まで行くことにした。微妙に疎外されてる感のある朝の食卓をやり過ごし、早めに家を出る。学校までの道々、考えなければならないこともあった。  ミロカさんの事だ。いや、考えなくてもいいのかも知れないけど、とにかく昨日、苦し紛れにした「告白(のようなもの)」が受け入れられ……たのだろうか、そこもいまいち判然とはしなかったのだけれど、今後どう対応したらいいのか、全くの不透明であるわけで。  ……このままバックれるのがいちばん良い方策かもなあ、との思いが僕の冴えない頭脳を巡る。ミロカさんは正直弩級の美少女であり、この僕が付き合うことなどフィクションの中でも昨今は難しいレベルであることは疑いようもないが、あの名状しがたいメンタルが、僕をいちいち真顔にさせてしまうわけで。もう無かったこととして済ませることはできないものだろうか。  いやでも学校は違うけど、あの「アジト」に行けば顔は合わせるだろうし、連絡先も交換しちゃったし……捌ききれないほどの「どうしよう」が頭に充満しかけてきた時、ふいに前を歩く制服の後ろ姿が目に入った。
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