▲3七金飛車(きんびしゃ)

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 せめて沖島だけでも、この場から避難させられれば……そう告げようとした僕だったが、 「……『ホリウメンター』だってミロカ……私は初めてなんだけど」  沖島の口から、そんな言葉が飛び出した。「日常」から出た「異次元」。あっるぇ~、僕の知ってる沖島じゃなーい。 「心配ないさ~、ミユくん。ちょっと指し手が速まって、ちょっと指し手が鋭くなっただけの、言わば初段レベル。君の敵ではない」  何とか先輩も、やけに余裕な口調でそうおっしゃいますが。  「異次元」は「異次元」に惹かれ合う。その事をこの後、僕はいやというほど思い知らされることとなる。混沌へと叩き込まれつつある僕は、助けを求めミロカさんの方を見やるが、 「と金……次、醜態さらしたら……コ〇ス……」  モードが……変わった……ッ、咀嚼嚥下出来ないことは諸々あるものの、この場の第一優先は、「対局」にて結果を残すこと。沖島も何とか先輩も、もしや導かれし者なんじゃね、とか、何故この場に偶然のように(偶然ではないのかも知れないが)集まってきたんだよおかしくね? との疑念は取り敢えず置いておく。 「君が『獅子』……その力、見せてもらおうじゃないか」  テンプレでもあるのか、何とか先輩が初めて僕を認識したようにそう言い、懐から黒い「将棋駒」、「ダイショウギ×チェンジャー」を取り出す。やっぱりそうなのか。でも彫られた文字は「金将」。あれ? 「二次元人が進化の過程で切り捨ててきた」のが我々の変身モチーフなのでは? その声に出さなかった疑問に答えるかのように、先輩は不敵な笑みを見せつつその「駒」を裏返して見せる。「飛車」。うん、それも馴染みあるけど。 「フハハハハ、第六の戦士とは得てして異端なるものなのだよ!! さあみんなで変身と洒落込もうじゃあないか、ダイショウギチェンジっ!!」  取って付けたようなテンションで、先輩は高らかに吠える。「第六の戦士」とか、わけの分からないことを言い始めたけど、そこは無視して僕も「駒」を構える。
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