△3八飛鷲(ひじゅう)

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「ダイショウギチェンジ!!」  計3名の声が重なった。僕とミロカさんと……そして沖島(オキシマ)。  いや沖島て。何で沖島が……っ!? いちばんあり得ないだろ……  沈着冷静。どんな圧勝局面でも、詰めろレベルの苦境に追い込まれても、いつも変わらない伸びやかな手つきと指し回しで、軽やかに盤面を制してしまう……そんな沖島が……っ 「……『ショッキング=ピンク盲虎(もうこ)』ちゃんなのだっ!!」  全・毛穴が浮き上がりそうになるほどのその高いアニメ声で、何か垢抜けないポーズを取っているよ……怖いよ……  おっしゃる通りの目に来る鮮やかな桃色のスーツは、周りの風景からも、この現実世界からも浮き上がって見える。お馴染みの「黒いパーツ」は顔面を、ゴーグルの上を覆っているけど。これじゃ前、見えないんじゃないか?  瞬間、今回はゼラチン質の板に、頭から貫通するように突っ込んでいくような感覚が来て、僕らの体はふわりと、またも宇宙空間のような重力を感じない世界へと引き込まれていった。辺りにおなじみの、真っ暗な中に星々を散りばめたような、まさしくの「宇宙」的スペースが展開していく。そんな中、 「ん『ゴールド金飛車(きんびしゃ)』、ッハァっ!!」  漂う上空で、「先輩」がキメのポーズを取って言い放ったものの、周りの反応はゼロに限りなく近いほどに薄い。  こちらもおっしゃる通りのメタリックな質感の「ゴールド」。「黒パーツ」は……無い。全身ゴールド。その色味は渋くていい。が、先ほどの沖島ショックに喰われた感じで特筆すべきことは無いまま、ノーリアクトで局面は進んでいく。
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