▲1三桂

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 いきなりのショッキング映像に、小さな画面の出来事であったが、僕は激しく動揺してしまう。 「こ、これ……」  何かの作られた映像には思えなかった。だが、現実感も同様に無かった。  金属のパイプの寄り集めのような「腕」を、セーラー服の背中から生やした女子生徒の体からは、血が噴き出すことも染み出すことも無く、その硬直した体は、うっすら光る無数の球体に分裂すると、画面の奥の方へと引っ張られるようにして消えていった。 「『二次元人』に『取られる』と、向こうの『手駒』に引きずり込まれてしまう」  相変わらず、老人の言葉には僕の理解は追いついていかないものの、「失踪事件」の真相がこれとか言わないですよね? 「そして『対局』に敗れると、その『38メートル×35メートル』のフィールドに囚われた20名全員が、『二次元人』として再構成されてしまう」  僕の疑問もさて置きつつ、老人の話は止まらない。その逐一が常軌を逸しているわけで、いやどうしますのこれ? 「奴らの『棋力』は絶大だ。そして何者かに統率されているかのような、足並みを揃えたのびやかな手筋……対する人間たちは、突然わけの分からない状況に引きずり込まれるのだから無理はないが、まともな着手は望みようもない……例えプロ棋士でも。そして各々それぞれが意思のある『駒』でもあるわけで……バラバラだ。バラバラに惑い動き、そして刺される」  老人は端末をしまい込むと、代えて白衣の懐から何かを掴み出した。
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