△4一奔王(ほんおう)

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 「対局」は終了した。  「鳳凰(ほうおう)」の速攻攪乱、「盲虎(もうこ)」の沈着戦術に「獅子(しし)」の問答無用の反則級能力。この三つが相まって、一方的なボコり将棋は僕ら「人類」の圧勝と相成ったわけで。  取り込まれた暗黒空間から無事、現実への帰還を果たした僕らは、何事も無かったかのように再び通学路に降り立つ。地球の重力をこうまで意識させられるのもこれで2回目。この重力感こそが、僕の意識も何とか現実へと繋ぎ留めている気がして、不思議と落ち着く自分がいる。  僕らの他に引き込まれていた一般の方5人も、無事帰還したことを確認する。めいめいが呆けた顔で辺りを見渡しているけど、速攻決着だったから、そこまでぴんと来てない様子。それならそれで全く問題は無い。ともかく今回も無事に終われて良かった。そしてこの流れに乗じて、ミロカさん発の諸々は、本日は避けられるのでは、との希望的観測が脳裏をよぎる。  僕の他の面子3人は場慣れしているのか、地上にふんわり着地してからは、すぐさま先ほどの続きかのように歩を進め出すのだった。と、 「いやぁ~流石はミロカくん。『モリアーゲミスト』の奴らでも右辺は速攻破れそうな勢いだった~あぁ、ミユくんの指し手指示も澱みない最短手筋でいやぁ~残念ながら僕の手番は回って来なかったねぇ~」  波浪田(ハロダ)と呼ばれていた金髪先輩が、またもや白々しいほどに軽薄な口調でそう感想を述べるが、あれ、貴方いましたっけ?
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