△4一奔王(ほんおう)

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「……モリくん、『レンジャー』の一員だったんだ。しかも『獅子』って、すごいね」  しれっと平常の姿とテンションに戻って沖島(オキシマ)はそう語りかけてくるが。「レンジャー」って、荒唐無稽のあの戦隊をそんな普通名詞にまで落とし込めてるキミの呑み込み具合と、現実/異世界を器用に切り替えられるスイッチを持ってることの方が脅威なんだけど。 「……」  問題の御方は、少し乱れていた髪を指で軽く梳いてからは無言だ。しかしその華奢な体から放たれている強烈なプレッシャーは、すぐ左隣を歩く僕にはぞんぞん伝わってきている。でも今回ばかりは大将首を上げる活躍しましたよ? 何とかっていう先輩よりはずっとチームに貢献したと思われるのですが。 「と金とミユはその……どうゆう関係……?」  ああー、そっちか! やっぱりそっち方面からは逃れられないか……と僕が諦めながらも大脳をフル回転させて誤解が生じないよう、それに向き合おうとしたところ、ミロカさんの後ろから、沖島が例の軽やかな声で説明をしてくれる。 「幼馴染よ。小さい頃から同じ将棋教室に通ってて、保育園も学校もずっと同じ」  そうそう、いま現在歩んでいる道はかけ離れているが。ルーツは一緒ってこと。改めてそう実感させられると、現況に息苦しさも感じてしまうのだけれど。 「なるほど……互いの棋風も把握しているということ……だからこそあれほどの連携が見せられたと」  ミロカさんの妙に硬い口調が気にかかるが、納得されたのでしたら何よりです。しかし、だった。
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