▲4二鐵将(てつしょう)

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「ミロカさんっ、沖島っ!!」  僕の真摯な呼びかけに、魍魎的な顔つきをしていた二人の表情が、普段の美麗と平凡なそれに戻る。二人の熱を帯びた視線が、この僕に集中する。今だッ!! 「二人共、ダイ、好キデソォォォォォォォォッ!! 二人共、二人共ニィィィィッ!! 我ガハーレムニ、入ル権利ヲ与エルデ候ォォォォオオゥッ!!」  渾身の一手はしかし、マイナス270℃付近まで、場の熱を奪い去ってしまったかのようだ。真顔に転じたミロカさんと沖島が、目顔で何かを通じ合い、頷き合っているが、ここまで来たらもう行くしかない。 「チョ~ォキョっキョっキョっ、集えよそしてさあ! 築こうぞ、我の『ダイヤモンド美濃』ふすきっ」  そこまでだった。ミロカさんの高い打点の右ハイを鼻下の人中辺りに、沖島の結構腰の入った右ローを膝裏に同時に受けた僕の体は、伸び切って衝撃を逃しようもないまま、中空にてびくびくと蠢いていた。  見事なツープラトン。そう、これでいい。僕ひとりが憎まれることで、チームの団結が図れるのならばッ、そしてこの世の平和が守れるのであればッ……去り行く二人から汚物を見るような目で見られながらも、僕は波浪田先輩とグッジョブサインを交わし合う。これも男の団結。  そしてここから、激しい戦いの日々が幕を上げるのであった。
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