16章 君のために

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・ 嫌な予感がしながら俺はいかにも興味ないって素振りでソファにもたれ、頬杖を付いた。 「いい娘ですよ…グラビアから女優に転身して最近ドラマや雑誌にも良く出させてもらってる今が旬ってやつですが、──どうでしょうか…」 社長はマリオのマネージャーに売り込みを仕掛ける。 グラビアから女優…… やっぱり舞花のことか・・・ 舞花をマリオんとこに寄越すのか?ヒンシュク買う覚悟かよ? 芸能事務所の社長と言えば親代わりも同然。バカな子ほど可愛いってやつか?── 俺は黙って行く末を見守った。 「では、宜しくお願いいたします。詳細はウチの楠木と…」 数分間の交渉の末、社長は電話を楠木さんに返す。 インチキ髭の巧みな交渉で、マリオの押した新人だけをあてにしてオファーをしてきた向こうのマネージャーは、大事なクライアントからの仕事を逃さない為に取り合えず舞花で手を打ったようだ。 楠木さんが電話を切ったことを確認して俺は社長に話し掛けた。 「やれんの?舞花に?」 「……しょうがない。間繋ぎになるとは思うが“もし”ってこともあるしな」 「間繋ぎ?」 「舞花に撮影してもらってる間に時間作れるかどうかってこった」 「……舞花じゃたぶん間繋ぎになんないと思うけど? とくにマリオが相手じゃね…」 「だからこっちの調整を急ぐんだよ…でも“もし”変わりにきた舞花が気に入られたら万々歳じゃないか?」 「………」 この手法って… 俺に舞花をけしかけたときと似ている感じがするんだけど!? そんな呆れ顔で俺は社長を見た。
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