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第1章 出会い
俺は人生で初めて腰を抜かすということを体験した。まず、整理してみよう。俺は学校から帰ってきて、部屋でずっとゲームをしていた。喉が渇いたので、ジュースを買いに近くのコンビニまで行った。そして買ってきたジュースを片手に部屋に入ると、やせ型で長身の男が立っていた。ここまでだったら別に驚きはするが、腰までは抜けなかっただろう。俺の腰を抜いたのは、部屋一面に散らばった黒い羽根と男の背中についていた大きな黒い翼であった。
「いつまで、そうしているつもりだ。」
彼は腰が抜けて立てない俺を見下ろしながら、そう言った。顔は20代男性といったところだろうか、なかなか整った顔立ちで、ほとんど人間の顔と同じであった。特徴的なのが、灰色の髪の毛と褐色の目、尖った爪に大きな黒い翼。ここまで揃ってくると、誰でも思うであろう。悪魔っぽい、と。
「悪魔で合ってるぞ。」
(え、何で、まさかこいつ、俺の心を読んで・・・)
「いや、お前・・・思いっきり声にだしてるぞ。」
「・・・そう、か。」
「そうがっかりするな。心は読めずとも、悪魔であることに変わりはない。」
「悪魔様が俺なんかに何のようだ。地獄への送迎には早いよな。」
「そんな状態でよくそんな軽口が言えたものだな、人間。」
「・・・」
「そう警戒するな、今すぐどうこうする気はない。」
「目的はなんだ。」
「・・・ある悪魔を探しに来た。そいつの名はサタン。お前も聞いたことくらいあるだろう。俺達の地獄におけるボスだ。」
「そいつが何でこの地上にいる。」
「地獄におけるある女科学者が偶発的にこちらの世界へとつながるゲートを作り出した。ちょうどその時近くにいたサタンがそのゲートに巻き込まれて、この世界のどこかに落ちてしまった。俺含めた9人の幹部達はサタンをこの地獄へ戻すため、そのゲートをくぐった。」
「その出口がたまたま、ここだったてわけか。」
「いや、そうではない。俺が召喚された場所はここからかなり離れたところだ。」
「じゃあ、どうしてここへ来た。」
「順を追って説明する。まず、サタンがこの世界に落ちた時、俺達幹部は知恵を出し合い、サタンが落ちた場所を割り出した。」
「どこだったんだ。」
「王新学園高校、お前の通う高校だ。」
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