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「ここ、ですか……」
「ん、もしかして嫌い?俺の隣に居てくれるんじゃなかったの?」
「ぐぅ……」
恭太に白い歯を見せられる。返す言葉がなかった。
「や、やったろうじゃねぇかい」
「おう、江戸っ子」
結果から言えば、真帆は普通に歌がうまかった。
「んだよぉ、嫌っぽくしといてうまいとかイヤミかよぉ」
「カラオケとか慣れてないんです!」
選曲は有名歌手のバラード。音程が正確なタイプというよりは表現力が高いタイプ。高音のビブラートが心地よかった。ビブラートは緊張で声が震えているだけかもしれない。
顔を真っ赤にしながらの真帆の歌を聞いているとなんだかほんわか安心してきて──
「──んお、あれ、寝てた」
目が覚めれば、真帆の太ももの上だった。
「ごめん。退屈だった訳じゃないんだ。」
「辛島君、最近、眠れてる?」
「うーん、あんまりだな」
寝るのは元々好きだ。でも、決まった残り時間を睡眠に割くのが勿体無い気がして、夜中も兎に角なにかしていた。それに、睡眠とは生きる為に取るもの。どうせ死ぬなら、無意味だから。
「駄目だよ。あと一年は生きるんだから、その為にちゃんと寝なきゃ。」
「……だな。ちなみに、この体制は?」
「………わ、私が勝手にやりました。」
「悪いね。疲れたっしょ?」
「ううん。私が好きでやってる事だから。」
恭太は暫くその体制でぼーっとしたあと、跳ね起きる。
「よし、寝たらスッキリした。折角フリータイムだし歌うか!」
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