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「ちわー」
「お、辛島。久しぶりだな。」
「気が向いたんで。」
帰りがけに恭太が寄ったのは生徒会室。彼は元々生徒会に所属、時期生徒会長とまで言われていた。それが今は、幽霊部員ならぬ幽霊会員だ。
「か、辛島君!久しぶり、だね。」
「おう。久しぶり。」
それほど背の高くない恭太でも見下げる形になるくらい小さな背。低い位置を真面目というゴムで纏めたカントリーの黒髪ツインテール。黒のボストン型眼鏡の奥で垂れ目を何処か恥ずかしげに逸らす少女。
恭太と同学年で別のクラス、恭太よりも少し後に生徒会に入った山野真帆。
「あの、何かあったんですか?」
本来、そこそこの優等生だったから休むと怒られるよりも心配される。
「んー、まぁ、何かあったね。もう帰るわ。じゃ、またー……いつか。」
「えっ、あの」
「かいちょーなら知ってるから、気になるなら聞いて?」
呼び止める声を手であしらって、恭太は帰路につく。
「あの、辛島君!」
振り返ると、髪を乱したツインテールの少女。
「お、聞いた?」
「き……『聞いた?』って……本当、なんですか?その……」
「よめー、もって一年!」
あまりにも軽く。あっけらかんと。ソシャゲのサービスが終了する、くらいのノリで、真帆の言い澱んだ部分を補足する。
「ほんとらしいよー。まーじでふざけんなだよなぁ」
「え、あ、……え、…………………」
「そゆ事。まぁ残り短い人生よろしくよ。じゃぁねー」
引き止めたかった。もっと話したかった。
だが、何を言えばよかったのか、彼女にはわからかった。
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