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それをフェレスに問うと、どうやら十五年前の事件が一つの線引きだった事を教えてくれた。
あの当時、帝国に近かったシウス達のいた集落やリカルドのいた集落は被害にあい、多くの犠牲を出し、散り散りになってしまった。
そういう経験をしたエルの民は人との交流を断ってしまいがちだが、そもそもは街との交易をして手に入らない鉄器などを買っていた。長く、そんな感じだったのだ。
ポリテスがいた集落はどちらかといえばクシュナート王国寄りで、エルの悲劇は耳にしてもその被害には合っていない。だから今でも街との交流を行っている。
「まぁ、俺達も今じゃそんなにお前等の事嫌ってないよ。嫌な奴もいるが、大概は善良で平凡だ。話せば案外、分かってくれたりするしな」
少し照れたようなフェレスの言葉に、騎士団の面々はどこかほっとした。
クシュナート王国との国境には、関所がある。そこが見える場所で、フェレスとリスクスは足を止めた。
「ここまでですね」
笑ったリスクスが、頷いて全員を見る。その表情はとても穏やかで、見守るような優しさがあった。
「皆さんの無事の帰還を、願っております。怪我のないよう」
「有り難うございます」
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