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「いいよ、多分泣きそうだったんじゃないかな? 最後に顔を合わせた時も、泣きそうな顔してたし。変にプライド高いじゃん? だから、沢山の人の前で泣くとかできないよ」
「ダメ兄……。チェルル、悪い」
「いいよ」
ケラケラっと笑うチェルルは大事に首輪を一撫でして、真剣な顔でランバートに向き直った。
「俺、本気なんだ。ランバート、許してくれる?」
頭を下げるチェルルに、ランバートは複雑な顔をする。
正直、簡単じゃない。まず、国を跨いでいる。しかもその国と現在交戦間近だ。
そしてチェルルは帝国内でテロ行為を行っていた。今命があって、これといった罰を受けていないのが不思議なくらいだ。
「……難しい問題が、多いと思う。俺がどうこう出来る話じゃない」
「分かってる。それでも、戻りたい。どんな罰でも受けるつもり。一生強制労働でも、何か差し出せっていうのでも。俺に出せるものは全部差し出すつもりでいる。命まで取られないなら、それでいい」
そこまで、考えているのか。覚悟を見て、なんだかすっきりとした。
ランバートは笑い、クシャリと黒い髪を撫でた。
「そこまであの兄を思えるなら、俺は何も言わないよ。むしろ、任せる」
「ほんと! 良かった。ここでつまずいたらどうしようと思った」
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