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フェレスが後ろで狼達に待てと言っていて、その後ろではポリテスがナイフで綺麗に熊の毛皮を剥がしている。あれを集落の入口あたりに置いておけば臭いがして、他の獣が近寄ってこないらしい。
だが、重労働だった狼達にとってはそんなの知った事ではない。邪魔な毛皮のなくなった場所の肉を引いて、鋭い牙でむしり取っている。
「うっ、やっぱ野生狼怖い……」
「まぁ、自然の摂理ってものを感じるよな」
スプラッターが苦手なコンラッドが青い顔をして顔を背け、そそくさと逃げていく。これに、他の面々が大きく笑った。
こうして、人々を震撼させた熊の脅威は去ったのだった。
==============================(ランバート)
予定よりも二日ほど遅れて、全員が無事に東の森を抜けた。
集落のリーダーであるポリテスは騎士団の面々に食料や燃料となる薪などを快く分けてくれた。「このくらいしか出来ないが」と言って。
傷の浅かった者はすっかり良くなり、重傷者も意識ははっきりとして介抱に向かっている。薬や治療の方法を丁寧に書き残したクリフに再三頭を下げた集落の人々は何度も、また来いと言ってくれた。
なんだか、不思議な感じがした。エルは外との付き合いを嫌っているのだと思っていた。だが実際に接した感じはそうでもない。実際ポリテスの集落では行商の人を泊めたり、交易をしたり、時には案内もするそうだ。
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