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いざ森へ
王都を発って砦を経由しつつ、東の森の手前に辿り着いたのは二年前よりも早かった。あの時は大人数だったからだろう、今回は少数だ。
「よう、来たか!」
手を上げたエルの青年フェレスは、騎士団の面々に比べれば随分軽装に見える。だが同じように隣りにいるリスクスも同じくらい。やはり、育ちの違いが見えてくる。
「フェレスさん、リスクスさん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。早く全てを終わらせて、安心してここで過ごせるようになりたいですから」
ゆったりと笑ったリスクスの目が不意に、チェルルへと向かった。その視線に、チェルルはとてもバツが悪く俯き加減になってしまう。
言いたい事が沢山あるだろう。ここを直接襲ったのがチェルルだ。
それでもリスクスは優しい。事情も知っている。安易な行動を起こせないのだろう。
そんな中、フェレスだけは近づいていってチェルルの前に仁王立ちした。腕を組み、睨み付けている。
場が、緊張した。全員がこの状況を静観するしかない。今更ここで「こいつだけは連れて行けない」と言われればランバートが宥めるが、他はどうしたら。
「おい!」
「っ!」
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