爪痕

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爪痕

 恐怖の一夜を過ごした翌日、天候が回復した一行はより慎重に先へと進んだ。扉のあるアジトを経由し、戸口には獣が嫌がる匂いを出す草を燃やして狼達は中へと招き入れた。  そうして数日、ようやく中間だという少し大きな集落に到着すると言われて、全員が安堵した。 「次は人のいる集落なんでしょ?」  レイバンの確認に、フェレスが頷いた。 「丁度帝国とクシュナート王国の中間辺りなんだ。流石にここまでは道を知ってる奴じゃないと来られない。十五年前の悲劇も、この辺は逃れたんだ。だから、未だにここで生活している」  多少痛そうな顔をしながらも、フェレスはもうそれを言わなかった。そのかわり、リスクスがこれに続いた。 「ヘメラ集落は丁度中間ということもあって、とても大きな集落なのですよ。建物も多いし、物も両国から入ってきます」 「この辺にも物流があるのか」 「帝国側からはごく稀に。ですが、クシュナートとは比較的活発にあります。あの国は北の民で、髪色も白銀です。あまり見た目に差異がないので」  ということは、物資の補給もある程度できそうだ。食べ物もしっかりと食べられるし、もしかしたら柔らかな場所で眠れるかもしれない。     
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