11人が本棚に入れています
本棚に追加
第一話 死神スカウトはじめました
1.
学食からは嬌声にも似た賑やかな声が絶えず漏れ聞こえてきた。大きく切り取られた窓
からは、まぶしい日差しが降り注いできた。
いつもは気が晴れる場所だが、今日は学食には行きたくない気分だった。
バイトの給料日後間もないのに、財布の中身は早くも乏しい。学食ならば外食ではあり
得ない値段でそれなりに腹を満たすことができるだろう。
しかし、誰か知り合いに会って他愛もない話を一言二言交わすことを考えるとうんざりし
た。
もちろんその逆もある。理由もなく人恋しくなって、他愛もない話を一言でも二言でも
交わしたくなることがある。勝手なものだ。
そういうときに限って、高確率で誰にも知り合いに会わないのだが、話をしたくないと
きは逆に複数人と顔を合わせてしまう。
それも厄介な奴。今だけは会いたくないってやつ。
「なーりた!」
学食とは反対方向へ歩き去ろうとした祐樹の肩を、突然有無を言わさぬ力で押さえつけ
る人物がいた。声のトーンと力の強さで確かめなくても誰だかわかる。
──ほら……やっぱり。
「今から昼? 一緒に学食行こうぜ」
こいつにだけは会いたくなかった。ゆっくりと振り返ると、人のよさそうな笑顔を貼り
最初のコメントを投稿しよう!