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ばしんと背中を叩かれたが、祐樹は呆然としていたのかほとんど痛みを感じなかった。時雨沢の説明を頭の中で反芻していた。スカウト者の業務はゲームのように単純ではない。死神という一人の人間と向き合うことなのだと思う。
──俺にパートナーなんて見つかるのだろうか?
祐樹はどこまでも弱気だった。
「それで成田くん、君はどんなふうに死神を判別するんですか?」
時雨沢との面接の後、再び室長が現れて祐樹は別室で能力テストを受けることになった。
「……目です」
考えながら祐樹は答えた。室長は用意してあったコーヒーメーカーからコーヒーを注ぎ、
ミルクと砂糖を添えて祐樹の前に置いてくれた。小さくお辞儀をすると、室長は微笑んだ。
「目?」
「そうです。目の色が、他の人と少し違って見えるっていうか」
拙い説明だと思った。そもそも、死神の見分け方が人によって違うということも知らな
かった。特別な能力だとも思っていなかったからだ。
「なるほど」
室長は頷いて机の上の用紙にメモをすると、「コーヒー、冷めないうちにどうぞ」と勧め
てくれた。
「ありがとうございます」
ミルクも砂糖も入れないコーヒーを口にすると、思った以上に香りがよく、固くなって
いた体がほぐれるのを感じた。
「成田くんはブラック派なんだね」
室長は変わらず穏やかで、話せば話すほど好きになるような人物だった。
「室長も、ですか?」
おずおずと訊ねると、室長はおかしそうに笑った。
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