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「消極的とか、人と接することが苦手とか、そういう特徴は表層にしか過ぎない。君があくまで、そう決めつけているだけだ。そして君はそれに気付いていないんだ。頑固だからね」 「どういう……意味ですか?」  意味はそのうちわかるよ、と室長は再び人懐こい笑顔に戻った。室長は心から(のように見える)笑顔と、腹に一物ありそうな笑顔を時に使い分ける。 「私たちは、君の善に対しての本質を高く評価しています。これから共に働いていく仲間なのだからね」 ──善に対しての本質?  よくわからないままに、室長が立ち上がったので祐樹もそれに倣った。 「これからよろしくお願いします。成田くんを、我々センターの一員として、歓迎します。ともに頑張りましょう」  室長に握手を求められ、恐る恐る手を握るとがっしりと肉厚なあたたかい手が祐樹を励ますように強く握り返した。 「はい」  もう戻れない。けれども何故か、後悔する気持ちはなかった。  自分自身が決めつけているのは、表層にしか過ぎない──。センターを出るころには、少しずつ室長の言葉の意味を噛み砕くことができていた。 「殻みたいに強靭な表層でも、表層って言えるのかな」  それでも、祐樹には自分が必要とされていることを感じていた。室長には底知れぬ恐ろしさを感じ、時雨沢には「怒られる」という直截的な恐ろしさを覚えながら──二人にすでに仲間意識を持っているのだった。     
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