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第ニ話 死神とドロップアウト
1.
センターからの根回しで、祐樹は通っている大学周辺を担当エリアとして指定された。
最初の仕事先だからということで、お目付け役の時雨沢主任も一緒にやってきた。祐樹よりは年上のはずだが現役大学生として周りに溶け込んでしまったのには驚いた。
センターの名前を使えば、いかなる公的な場所でも融通が利くらしい。
祐樹は毎日、学内で潜在死神を探していた。できるだけ多くの授業に顔を出し、興味のないサークルを見学しに行ったりした。多くの人間がいるはずのキャンパス内には、期待に反して一人も見つけることができずにいた。
祐樹は毎日普通に大学へ出向き、時雨沢に監視されながら授業を受け、頻繁につるんでいるグループたちと意味もなく喋ったり、ときに酒を飲んだりしていた。
──こんな日々の繰り返しでいいのだろうか。
その日の祐樹は、ふと気付くと大学とは逆方向へ足を向けていた。
一人でぶらぶらと歩いていると、久しぶりに平日の朝の空気を堪能できる気がした。
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