11人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、祐樹を見据えた目もヘーゼル色だった。
──こいつ、死神……。
間違いない、わかりやすすぎる死神だ。
出会いたいと焦がれていたものの、いざ目の前にすると、足が震えた。
が、こんなところで取り逃がすわけにはいかない。
「あんた、さっきから何の数字を呟いてるんだ?」
思わず初対面の少年に向かって話しかけた。少年は一瞬狼狽の表情を浮かべ、それから静かに無表情になっていった。
──何だか気味の悪い奴……。
祐樹は少年の無表情にたじろぎそうになる。しかし次の瞬間にほとんど抑揚のない、のっぺりとした声を聞いた。
「……寿命」
えっ?
祐樹は聞き返した。それは人が普段発する声とはどこか調子が違っていた。ひどく平板で、イントネーションも微妙に違和感がある。
「寿命?って言ったか?」
大声で聞き返すと、少年は眉間にしわを寄せ苦し気に耳を塞ぐ。
──大きな声が苦手なのかな。
「大声出して悪かった。寿命って言ったのか?」
祐樹はもう一度、慎重に切り出した。
少年は曖昧に頷き、しばらくためらっている様子だったがゆっくりと言った。
「寿命が見えるんだ」
そう言って少年は再び駅の往来にまなざしを向ける。
最初のコメントを投稿しよう!