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 ほとんどの人が知らない事実だけれど、この世界では死神が不足していた。  これもまた、ほとんどの人が知らないけれど、死神の存在は必要不可欠だ。死神のイメ ージは、死を予言する不吉な存在だろうけど、それだけではなく現実の死神は亡くなる人 に「あなたは亡くなった」と宣告し、きちんと次のステージへ送り出さなくてはいけない 義務がある、そういう世の中の摂理を祐樹は今の立場になって初めて知った。  現状、深刻な死神不足につき、亡くなった事実を受け入れられていない「半死人」はど んどん増加の一途を辿っている。  では死神をどうやって増やせばいいのだろう?  いくつか方法がある。しかしながら誰でもが死神になれるわけではなく、能力が必要だ。その人の寿命が見えたり、死期がわかったりする能力。死神の能力が開花する年齢は人それぞれだが、十代にもなればさすがに周囲との異変に気づく。しかし気付いたところで死神としての運命を選んでくれるわけではない。  死神は割に合わない苛酷な仕事だからだ。 「あー、もしもし。成田祐樹さんの携帯でよろしいでしょうか」  何気なく電話を取ってしまってから気付いた。     
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