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何故祐樹の名前と電話番号を知っているのか。
突然の電話から祐樹の人生の歯車が狂い始めた。電話を取ったのが間違いだった、と思
うも、このとき電話を取らなかったとしても何らかの方法で接触してきたような気がして
ならない。
「突然で申し訳ありませんが、死神のスカウト、始めませんか?」
「えっ……」
祐樹は言い淀んだ。知らない番号の電話に出てしまい、予想を超える怪しい内容を聞き
かけてしまっていることを──ものすごい勢いで後悔していた。
話を遮って切ってしまうなら今だ、そう決心したとき、電話口で知るはずもない男が少
し笑う気配がした。
「成田さん、死神が見えますよね?」
息を呑む祐樹を察したのか、「では言い方を変えましょう」と男は言った。
「大勢の人間がいる中で、誰が死神かわかりますよね」
続けて問われた声に、祐樹は口を閉ざしてしまった。言われたことは図星だった。
祐樹は九歳の時に母親を病気で亡くしている。その二日前に現れた死神を、今でもはっ
きりと覚えていた。
「いやー、今は潜在死神が多くてですね。深刻な死神不足なんですわ」
電話口で絶句した後、どういう話の流れか記憶にないが、電話の主と家の近所で会う運びとなっていた。
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