2.

3/7
前へ
/226ページ
次へ
現れたのは人の良さそうな小太りの中年男で、祐樹に向かって名刺を差し出した。 「死神登録センター室長」 反射的に名刺を受け取ってしまった祐樹は、そこに書かれた文字をまじまじと眺めた。 「あはは、本当に来てくれたんですね。成田さん」 まったく悪気のない口調で言われ、祐樹はムッとする。 「だって、来いと言われたから来たんでしょうが」 尖った声が出てしまい、我に帰った。 「そうですよね、失礼しました。あなたのような即戦力になる人が来てくださることになったら、とても嬉しいし助かるんです」  そう言って、ふいに見せた男の笑顔は人懐こくて、祐樹は迂闊にも心を許しそうになっ た。 「即戦力……?」 「ええ。成田さんのような……死神を識別する能力を持つ方を我々は、死神そのものと同 じくらい必要としていますから」  男は祐樹の目の奥をじっと覗きこんだ。 「どうですか?成田さん。その能力を生かして、私たちのセンターで働きませんか?」  私たちと一緒に。  男の口調は穏やかだが有無を言わせぬ調子があった。祐樹は思わず、男の目に吸い寄せ られそうになった。  一言二言会話をしてから踵を返すという選択肢もあった。     
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加