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現れたのは人の良さそうな小太りの中年男で、祐樹に向かって名刺を差し出した。
「死神登録センター室長」
反射的に名刺を受け取ってしまった祐樹は、そこに書かれた文字をまじまじと眺めた。
「あはは、本当に来てくれたんですね。成田さん」
まったく悪気のない口調で言われ、祐樹はムッとする。
「だって、来いと言われたから来たんでしょうが」
尖った声が出てしまい、我に帰った。
「そうですよね、失礼しました。あなたのような即戦力になる人が来てくださることになったら、とても嬉しいし助かるんです」
そう言って、ふいに見せた男の笑顔は人懐こくて、祐樹は迂闊にも心を許しそうになっ
た。
「即戦力……?」
「ええ。成田さんのような……死神を識別する能力を持つ方を我々は、死神そのものと同
じくらい必要としていますから」
男は祐樹の目の奥をじっと覗きこんだ。
「どうですか?成田さん。その能力を生かして、私たちのセンターで働きませんか?」
私たちと一緒に。
男の口調は穏やかだが有無を言わせぬ調子があった。祐樹は思わず、男の目に吸い寄せ
られそうになった。
一言二言会話をしてから踵を返すという選択肢もあった。
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