11人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし結局、祐樹は「死神スカウト」という職業に携わることになった。男と一緒にセンターに出向くと、そこで今の上司にあたる時雨沢を紹介された。同時に死神の特性や現状などのもろもろを聞かされた。
死神は、専業と兼業がいるということ。いったんは高報酬ということもあって専業死神を選ぶ人が多いが、精神的な負担や労働時間の不規則さを理由に、「短時間パート」的に兼業死神にシフトする人が多い。あるいは、すっぱりと死神の世界から足を洗う。
というような状況で、死神の能力を持っていながら、きつい仕事であるため死神職を逃れている「潜在死神」が実に多く、専業死神をセンターでは強く欲している。しかし強制することができないので、何とか「死神っていいですよー。やりがいがあるお仕事ですよ」と説得し、死神の登録数を増やすのが祐樹たちの仕事のようだった。
「一度で登録してもらえるものじゃないから、根気よく通って心を開かせるんだ」
時雨沢の説明を祐樹は大人しく聞いていた。
「説得するための懐柔アイテムもたくさんある。年齢によって使い分けられるから。たと
えば」
時雨沢は手にしていたクリアファイルの中を物色し始めた。
「ファストフードの割引券とか、居酒屋のドリンクチケットとか、おっ、スポーツクラブ
の優待券なんてものもある」
「はあ……」
祐樹はうんざりした気持ちになった。
「そんなんで死神やる気になるんですか」
最初のコメントを投稿しよう!