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裁判の公平さを保つ為、傍聴人と証人の会話は原則禁止となっています。
あれはお父さんの精一杯の言葉だったと、そう思いました。
「ありがとう」なのか「申し訳なかった」なのか。
「私達をよろしくお願いいたします」なのか。
お父さんなりの私達傍聴人に対しての『精一杯の言葉』
彼らと私の人生は交わってはいない。繋がってはいない。
ただ、被告人と証人と傍聴人というだけで。
これから先の人生で交わることも、繋がることも恐らくありません。
けど、お父さんがあの御辞儀をした一瞬、確かに私と彼らの間で何かが濃密に交わり、繋がった――そんな気がしました。
『一期一会』
戦国の世において。常に死が隣り合わせの日常の時代。千利休が言った言葉。
明日には死ぬかもしれない。今、会っている貴方とはここが今生の別れとなるかもしれない。
だから、大事にしなさい。常に誠心誠意を込めて人に対しなさい。
お父さんの一礼を見て、何故か思い出しました。
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