リグレット

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リグレット

***  高校から家までの道のりは長い。お供として買った飴を食べてみれば想像とは程遠い土臭さがした。 「うわ、人参味……」  袋を確認してうんざりとする。誰が考えたんだこんなもの。見ずに買ってしまったわたしも悪いのだが。  その味が呼び起こしたのは嫌な思い出だった。公園に差し掛かっていたこともあり、遠くからあのツツジの茂みを見る。  ツツジの花は色とりどりに咲いていたが不自然な揺れはない。守られていた者である飛田が消えてからしばらくが経っていた。  あれから、飛田は引っ越してしまった。どうやら飛田は親に捨てられたことを担任に話していなかったらしく、わたしの発言はきっかけとなった。事情を知った大人たちが動き、最終的に飛田の祖父母が引き取ることになったそうだ。  祖父母に引き取られる結末を飛田が望んでいたのかどうかはわからない。なにせあの日以来、わたしは飛田に一度も会わなかったのだから。  他の保護者を得る。その救出方法は思い描いていたものとは程遠く、大人にしかできないこと。わたしがしたことは悲劇を増幅させるだけ。彼が発せなかったSOSをかわりに発信したのかもしれないが綺麗なやり方と言い難い。だって学校や公園といった居場所を奪って、飛田を傷つけたのだから。  そもそもわたしは、悲惨な状況の真っ只中にいた飛田が何を求めていたのかわからないのだ。それはきっと一晩の飢えを満たす食料ではなく、別の救いだったのだろう。
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