セルフィッシュ

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 思い浮かんだままに聞いたので当たっている自信はなかった。だが飛田はびくりと体を震わせた後、おずおずと頷いた。 「……誰にも、言わないで」  男の子のくせにいまにも泣きそうな顔をし、こんがりと焼けたパンに指が沈みこんでいく。  まるでわたしが飛田をいじめているみたいじゃないか。飛田はわたしより背が高かったはずなのに見下ろす姿はうんと小さくて、パンも飛田も潰れてしまいそうだった。 「別に言わないけど」 「ありがとう。助かる」  話を打ち切り、顔を背ける。でもわたしはまだ立ち尽くして、飛田を見下ろしていた。  湧き上がるのは、いままで味わったことのない奇妙な味。わたしはいま、ツツジに守られていた飛田の弱いところへ踏みこんでいるのだ。 「ねえ、どうしてここで食べてるの。理由は?」 「それは……」 「これあげる。相談にのるよ」  差し出したのは、下校中こっそり食べるためポケットに忍ばせていた、硬貨の形をしたチョコレートだった。  飛田が甘いものを好んでいるのかはわからない。これを取り出したのはわたしの勘だ。隠れてパンを食べているのだから、お腹が減っているのかもしれないと思ったのだ。  その勘は当たった。飛田の瞳がきらりと輝き、わたしより日に焼けた指先がそれを掴む。 「いいの? ありがとう」  強張っていた顔つきも柔らかくなって、警戒が薄れる。チョコレートで買収されてしまい、すっかり心を開いた飛田は、パンを食べながら話してくれた。 「俺、捨てられたんだ」  それはパンと同じようにシンプルな一言だった。
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