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ところが!
通りに出て少し歩くと、すぐに背後から若い女性に声をかけられ、ビクッとした。
「女優の波さんですよね? 私、ファンなんです~」
「ちっ、違います! 似ているのでよく間違われるけれど、私は女優ではありませんので!」
とっさにキッパリそう言うと、あっさり「あっ、失礼しました」と返ってきて危うく難を逃れた。
また、声をかけられたりしないように早歩きで歩き、なんとかコンビニへ入ったけれど、ホッとしたのもつかの間。
冷蔵室の前で飲み物を選んでいると、何やらヒソヒソ話が聞こえてきた。
「あれ、女優の波じゃない!?」
「まさか~! あんな色あせたスエットスーツを着ているわけがないわよ!」
「それもそうねぇ~」
また、別の方からは…
「マスクで顔を隠しているけれど、あれ、女優の波よね!?」
「えっ!? どれ?? うわぁっ、ノーメイクじゃない!!」
方々から刺すように視線を感じた。
もう、嫌! 一刻も早く帰ろう。
波は急いで飲み物と雑誌を手に取るとレジを済ませ、結局、アイスクリームは諦め、逃げるようにコンビニを出た。
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