第1章

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 3  面と向かってブサイクと言われると、さすがにムカつく。  しかも見下ろしている若い女の人がちょっとだけ、ほんの少しだけ女優のなんとかに似ていたからってだけで、フツメンの僕をブサイク呼ばわりはひどいと思う。  いや確かに顔面偏差値は負けている。  それは認めるけど、ほんのちょこっとだけじゃないか。  ちょっと、だ。  それなのに初対面でブサイクなんてひどすぎる。 「うなあおん(ちょっと、幾ら何でも!) 「うわ、しかも声も可愛くない」  抗議を口にした僕に、さらに被せてくる始末。 「うなああああお(可愛くなくない! 猫なんだ!)」 「あーもううるさいなあ、洗濯物が干せないってば」  しっしっ、と手先で僕にどこかへ行けと示すこの女、なんと床から持ち上げた洗濯カゴを抱えた。  人の家で何をやってるんだ、この女。
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