第1章

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4 「んな……? (え……?)」  今、しゃべった。  見返すと、ビー玉みたいな緑色の丸い目が僕を見ながら、すうっと細くなった。 「んにゃん(やっぱり)」  白いふわふわの猫は、あきれたようにため息を吐き出して、飼い主らしい女を見上げた。  猫のため息なんて初めて見たけれど、本当に呆れ果てたって感じだった。 「ちょっと、キララちゃんに変な病気とか移したらダメだから、どっかに行きなさいって! どっかに行きな……」  ゴタゴタと喚く女の顔は下から見上げると、細身だと思ったけれど意外にも二重アゴっぽくなって、あんまり美しくない。  女が足で蹴るような仕草をするので、僕は思わず目を閉じたのだったがーーーー 「なぁーん(黙りなさい)」  キララ、と呼ばれる白い猫がそう口にした、その瞬間に女が上げた足の動きが止まった。  
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