第1章

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2  猫の肉球で地面を歩くと、きっと痛いんだろうなと思っていた。  少なくとも僕の知っている猫の肉球はプニプニと柔らかくて、小さな子供の指のように頼りないくらいだった。けれどどうやら、野良というか外の猫のものは事情が違うらしい。  そしてついでに、僕はどうやら外の世界でたくましく生きる野良猫として存在しているらしい、ってこともわかってきた。  住宅地の空き地だか公園だかよくわからない場所をでて、アスファルトの上を歩いてしばらくしてから気がついたんだけど、なんというか素足で地面を歩いているような気がしない。  もしも人間のわかる範疇で例えて言うならば、地下足袋とか、底があまり厚くないランニングシューズとか、そんな感覚だ。  肉球はとても硬くなっていて、痛みは感じないし硬いものの上を歩いていることはわかっても、ザラザラだとかのあまり細かい感覚はない。  なるほどな、このある程度鈍くなった感覚と猫のジャンプ力があるなら、塀の上とか屋根の上とかも楽々と行けるわけだ。
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