第1章

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 そうか、野良猫かあ。  野良で生きていくのは大変だろうけど、何しろ今の僕はただの夢の中な訳で、つまりは猫の生活を体験させてもらっているだけ。  どうせ最長8時間で目が覚めて終わりになる体験なんだから、できれば自由にできるだけいろんなことができる方がいいに決まってる。  やるじゃないか、野良猫の設定にした僕の頭は本当に上出来だ。  もしかしたらあれかな、最近ちょっとストレスが溜まってたから休暇も取れない僕を癒すために脳が勝手に作り出した、とか。  どっちにしろ、これはいい。  最近は特にアパートと駅、駅と会社の間しか歩かないし、運動不足だったから丁度いい運動になるし。猫の体はやっぱり想像した通りに身軽で、びっくりするくらいに軽い力で高く跳ぶことができる。流線型の体は走ることも早いし、僕の人間の体で運動するよりも動きやすくて、すごく楽だ。  僕は自分自身の頭の出来を褒めたたえながら、見慣れた通りに出た。
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