第1章

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「んにゃ?(あれ?)」  開かない。おかしいな、猫の力じゃ開かないんだろうか。  そんなに重かったっけ、うちのサッシ。ボロいし軽い方だと思ってたけど。  もう一度、今度はさっきよりも力を入れてみた。でもやっぱり開かない。 「んにゃう(なんでだろう)」  おかしいな。  もう一度、と僕が思いっきり力を入れてサッシを引いたとき、ひどく軽くサッシがからからと開いたから、僕は勢い余ってよろけて転けてしまった。 「あれ、猫ちゃん!」  若い女の声が頭上から降ってきて、僕は顔を上げた。 「うわ、ぶっさいく」  そこには僕よりも少し若い女の人がいて、抱えた洗濯カゴの上から僕を見下ろしていた。  ぶさいく、と眉を寄せて付け加えた。
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