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そう告げた華の唇が、チュ、とほんの一瞬、航汰のそこを掠めた。何をされたのかすぐには理解出来ず、目を見開いて固まる航汰の濡れた髪に、華は今度はしっかりと唇を押し当てた。
「やっぱり、危なっかしい」
そこでやっと口づけられたのだと気付いた航汰は、恥ずかしいやら少し悔しいやらで、華の胸元へ顔を埋めた。こういうところは、やっぱり華は大人で自分はまだ子供なのだと思い知らされる。
「……先生。俺たちって、両想いだって思ってもいいの」
「航汰が先に、抱き締めてくれたくせに」
「だって、何か俺が一方的に言っただけだったし……」
気恥ずかしさで段々語尾が小さくなる航汰の頭上で「ああそうか」と思い出したような声を上げた華が、身を屈めてコツ、と航汰と額を合わせた。
「俺は、初めて園で会ったときから、航汰が好きだ」
「~~~~~っ」
目尻に皺を刻んだ航汰の大好きな顔で、躊躇うことなく告白の言葉を寄越されて、胸が詰まって倒れそうになる。華が航汰目当てにコンビニに来ていると言っていた染谷の言葉は間違いではなかったことがわかって、今更ながら胸の奧が嬉しさでムズムズしてくる。
この人を恐がっている人間は、間違いなく人生の大半を損している。勿論、華のこんな顔を知っているのは、本当は自分だけでありたいのだけれど。
こんなにも愛おしい人を、航汰は知らない。
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