最終話

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 いつか華と一緒に働ける日が来ますようにと胸の内で願いながら、航汰は濡れた身体で、華と温もりを分かち合った。   ◆◆◆◆◆ 「ハナせんせー、おはよーございます!」  園舎の玄関で出迎えてくれた華に、今朝も真波が元気よく挨拶をする。  身を屈めて「真波ちゃん、おはよう」と返した華が、航汰にも「おはようございます」といつものごとく、丁寧に挨拶してくれる。  もうすぐ梅雨が明け、暑い夏がやってくる。  すっかり手首の骨折も完治した華は、変わらず『あおぞら保育園』で保育士を続けていた。  他の保育士や保護者たちの目があるので、園での航汰と華の接し方も相変わらずだ。  けれど、少し変わったところもある。 「ハナセンセー、おはよー!」 「こら! 『おはようございます』でしょ!」  元気よく玄関に飛び込んできた真波と同じクラスの園児が、まるで友達みたいに華に挨拶をして、母親に窘められている。そんな園児に「今日も元気だね、おはよう」と華は笑顔で答える。  最近少しずつ、こうして華に声をかけてくる園児が増え始めた。そして園児が懐き始めたことで、保護者たちの目も、徐々にではあるけれど、確かに変わりつつある。     
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