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番外編 手を出したいのは俺の方
「かーわい~~~!!」
大きなガラスに張り付いて、真波が歓喜の声を上げた。
厚いガラスを隔てた向こう側を、丸々としたアザラシが何度も横切っていく。
三月になり、航汰も真波も春休みに入った。
そしてこの休みが明ければ、航汰は高校二年生。真波はいよいよ小学生になる。
今日は真波の小学校入学祝いにと、華が航汰と真波の二人を水族館に誘ってくれていた。
保育園を卒園し、もう華と会えなくなることを、「やだ」と散々泣きじゃくっていた真波は、華からの誘いに飛び上がって喜んだ。華と航汰のプライベートの付き合いなんて、勿論真波は知らない。実はこれからも会おうと思えばいつでも会えるということを、一体いつどうやって真波に打ち明けようかと、航汰は複雑な心境で居たのだけれど。
それに、真波の卒園が寂しいのは、航汰だって同じだ。
華の自宅にはしょっちゅう夕飯を届けに行っているし、華は航汰のバイト先のコンビニに、定期的に顔を出してくれる。それに何より、互いに想い合っている仲なのだから、プライベートでいくらでも会う機会はある。
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