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決して子ども扱いされたいわけではないのに、保育士の顔を向けて貰える真波が羨ましくなってしまう。真波も真波で、航汰の言うことは聞かないのに、華に優しく注意されただけで「はーい」と素直に返事をして歩調を緩めている。
これはもしかして、最大のライバルは幼い妹かも知れないと苦笑しながら、航汰は華との間に真波を挟んだまま、イルカショーが行われるスタジアムへ向かった。
アナウンスを聞いてすぐに移動したお陰か、ショースタジアムでは中央よりやや後列の、プール全体が見渡せる良席を確保することが出来た。
真波は最前列の水飛沫がかかる座席に座りたがったが、びしょ濡れになるにはまだ少し肌寒い時期なので、華が上手く言い含めてくれた。
ショーが始まると、真波は次々にダイナミックなジャンプを繰り広げるイルカたちに釘付けになっていた。ショーを盛り上げる為のBGMが大音量で流れているのを利用して、航汰は隣に座る華へ少し身を寄せた。
「先生、今日貴重な休みだったのに、ありがとう」
春休み中の保育園は、新年度から新たに入ってくる園児を迎える準備などもあり、殆ど休みが取れないと華から聞いていた。そんな中奇跡的に貰えた有給を、華は航汰と真波の為に割いてくれたのだ。
「いや、土日ならもっと混むだろうし、むしろ平日に来られて良かった」
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