番外編 手を出したいのは俺の方

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 華が買ってくれたアザラシのぬいぐるみを抱きかかえてご機嫌だった真波を自宅へ連れ帰り、母に「出掛けてくる」とだけ言い置いて、航汰は華の自宅へやって来ていた。  途中スーパーに立ち寄り、用意した今日の夕飯は唐揚げと、小さめに切った野菜具沢山のスープ。メインを唐揚げにしたのは、華が野菜より肉好きというのもあるし、どうせなら店で揚げただけのコンビニの唐揚げではなく、ちゃんと下味から手を加えたものをたまには食べて貰いたかったからだ。  そして出来上がった夕飯を二人でつつきながら、航汰はこの日初めて、母の描いている作品の具体的な内容を華に打ち明けた。 「……今まで黙ってて、ごめん」 「航汰は年頃の男子高校生だし、なかなか話せないだろ。むしろ、俺に話して良かったのか?」 「相手にもよるだろうけど、母さんは多分、華先生には知ってて貰った方がいいって言うような気がする。俺も初めて聞いたときは衝撃だったけど、今思えば、聞かされずにうっかり見ちゃったら、俺がもっとショック受けると思ってたんじゃないかなって。……でも、先生は衝撃だよね」  瀬戸内家では真波を除いて、母がBL漫画の執筆に日々追われているというのはすっかり日常の光景だが、華は違う。  さすがにちょっと引かれただろうか、と伺うようにチラリと視線を向けると、華は麦茶を一口呷って目尻の傷に皺を寄せた。     
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