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「本屋で何度か、コーナーを見かけたことがあるから、そういうジャンルもあることは知ってた。少し驚きはしたけど、前にお母さんが漫画家だって聞いたときも、航汰はちょっと複雑そうな顔してたから、むしろやっと今その理由がわかった」
「親の影響で、華先生のこと好きになったって思われたくなくて。だから余計に、母さんにも何て言ったらいいかわからないっていうのもあるんだけど……」
「航汰のご両親には、俺からもちゃんと挨拶したい。航汰や真波ちゃんが居なかったら、俺は多分保育士を続けていられなかったし、こうして航汰と過ごすことも、出来なかった。そのことだけでも、どれだけ感謝しても足りない」
だから悩んでるなら一緒に話そう、と笑った華の長い腕が、航汰の頬へ伸びてきた。スルリと優しい動きで撫でられて、泣きたいくらいに胸が詰まる。
航汰だって、こんなにも優しい人を生んでくれてありがとうと、華の母親に面と向かってお礼が言えたら良かったのに。
堪らず畳の上を這っていって、ギュウっと華の首にしがみ付く。
「航汰?」
突然抱きついてきた航汰の背を、少し戸惑いながらも抱きとめてくれる華に、航汰は何度も「好き」と繰り返した。
「……先生。今ならイルカと同じこと、出来るよ」
航汰の言葉の意味が一瞬わからなかったのか、目をしばたたかせた華が、少しして吐息で笑った。
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