番外編 手を出したいのは俺の方

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「いや……さすがに先生みたいにデカくはならないだろうけど、あんまガタイ良くなったら、益々触りたくなくなるかなって───」 「ちょっと待て」  珍しく慌てた様子で、華が航汰の肩を掴んだ。 「もしかして、そんな理由で、躊躇ってると思ってるのか?」 「やっぱり、俺に触んの抵抗あるんだ」  意図的に拒まれていたのかと自嘲気味に呟くと、「そうじゃない」と華の両腕が航汰の背を抱き竦めた。思いがけないその力強さに、息が詰まる。 「……華先生?」 「航汰が、俺を求めてくれてるのは、わかってる。俺も、本音を言えば、もっと触れたい」 「だったら……!」 「ただ、航汰はまだ高校生だ。それに、俺が自分の欲求のまま手を出したら、多分痛い思いも怖い思いもさせる。でも俺は、航汰を傷つけることは、絶対にしたくない。───大事に、したいんだ」  苦しいくらいに抱き締めてくる腕と、絞り出すような華の声が、胸の奧に直接響いてくる。  ───こんなにも大事にされてるんだから、傷ついたりなんか、しないのに。  相変わらず華は、見た目に反して臆病だ。  この一年で、華は随分表情が柔らかくなった。     
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